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マーケティング戦略をステップbyステップで立案するための初心者向けの戦略コースです。このコースでは、マーケティングの基礎から始め、戦略の立案、実行、評価までを学ぶことができます。マーケティング戦略は、成功を収めるための不可欠な要素です。それでは、どのようにして効果的なマーケティング戦略を設計するのでしょうか?
戦略的なマーケティングプランを作成するための具体的な手法を身につけ、自社やクライアントのビジネスに成功をもたらす方法を学びましょう。このコースでは、顧客のニーズや好み、市場動向を分析し、それに基づいて適切な戦略を策定する方法が詳しく解説されています。
初心者でもわかりやすいように構成されており、実践的な事例を通じて理解を深めることができます。また、講師は実務経験豊富な専門家であり、実際のビジネス環境に即した知識と洞察を提供します。
マーケティング戦略の作成に迷っている方やビジネスを成功させたい初心者の方にとって、このコースは理想的な選択肢です。ぜひ参加して、将来のビジネス成功に向けた一歩を踏み出してください。
本コースの開始前に
本コースの内容を動画でも学習いただけます。基本的には同じ内容ですが動画の方が理解がすすめやすいと考えています。
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また、本講座を受講いただくにあたりワークシートを以下より入手ください。
それでは早速初めていきましょう。
1章:コースの概要と基礎知識
1.1 マーケティング戦略 講座紹介
マーケティングの基本から応用までの戦略を学ぶ講座です。戦略を立てるための手順を説明していきます。理論だけでなく実際に活用できる知識を提供します。この講座にご参加いただき、心から感謝申し上げます。
ここでは、当講座が提供する教育内容と教育方針についてご説明します。また、この講座が誰にとって最も適しているかの概観についても、お話しする予定です。
マーケティングの難しさ
「マーケティング」と言う言葉は日頃よく耳にすると思います。しかし実際に何をしていいのか途方に暮れている人も少なくないと感じます。
やはりこうした分野には、理解しづらい業界用語が多用されています。また市場にはさまざまなマーケティング関連の書籍が出版されているのが現状です。
書店には「●●マーケティング」といったタイトルのものがたくさんあります。
初心者が学び始めるために、このような本を手に取る人もいるのではないでしょうか。
マーケティング戦略の学習の困難
それらの本の内容はいかがでしたでしょうか。
もちろん、何か理解したように感じることもあると思います。しかし時間が経つと内容を忘れがちになったり「わかっていなかったな」と思うことがしばしばあります。多分このような、理解したかのようで、実際には理解していない、そんなあいまいな感覚を持つことが多いのではないでしょうか。
マーケティングの勉強を始めた頃、私も似たような経験をしていました。たくさんの本を読んではいたのですが、重要なポイントや適切な思考法を理解し、自分のものにするのが大変でした。
なんでそうなるのかな、と思ってみたんです。理論上の説明ばかりで実際の実践に基づく説明が欠けているからだと考えています。だからそれを自分自身で理解し取り入れるのが難しいのではないかと感じています。
マーケティング分野における実践的な手法の重要性について話すと、よく複雑な専門用語が出てくるものです。これらの難解な理論が実務にどのように応用可能かというのは理解しにくいところがあり、それが問題の一つとなっていると思われます。
この問題点について考慮すると、私たちは理論の解説と、それを実践を通じてどのように理解するか、この二つの主要な観点から授業を展開していくことが有効だと思います。
理論と実践での学習
本を読んで学ぶことは重要ですが、複雑な理論を理解するだけでは不十分です。理論を自分の商品に応用する方法が分からないと、大きな障壁に直面する可能性があると考えています。
この講座を受けることにより、実際的なワークショップで架空の製品を作成し、その製品の戦略を練る作業を共に進めていくという経験を積むことができます。そうすることで理解が深まるだけでなく、学んだことが実践的に役立つようになります。
もし実際の製品であるならば、このコースが提供する指針に沿って作業を進めることで、最終的には戦略を立てることができるようになる、という風に設計を立てています。
理論についての説明は理解しやすく行うよう心掛けています。専門用語をできるだけ避け、誰にでも理解しやすい平明な言葉を用いています。確かに、この講座では専門用語も登場しますが、それらを明快に分かりやすく解説しているため、専門用語に惑わされずに学べるよう配慮しています。
実践部分の展開
実践部分に関してはワークショップ型のシートを用意しています。
こちらよりワークシートの送付を申請ください。無料でご指定のメールアドレスへ送付します。
この授業を実際に体験し、自ら手を動かして進んでいただきたいと願っています。使用する商品は架空のものでも構いません。もし自分の商品をお持ちでしたら、それを使用することをお勧めします。
または、あなたが会社で働いている場合、所属する会社の所有するブランドを活用してもらえればと思います。仮に自分がその製品のブランドマネージャーだとしたら、その商品をどのようにして売り出すかのマーケティング戦略をどう策定するか、そのプロセスを実践的にトレーニングしてみるのも良いでしょう。
そのマーケティング戦略を策定するプロセスの習得はもちろん、実際に適用可能な戦略が完成するように組み立てられた講座です。
この講座では、主として子ども向けの電動歯ブラシを製品例にして、新商品としてみなし、それを市場に出していくためのマーケティング戦略を構築する過程をご紹介します。こうすることで、適切な戦略思考について皆さんと共有し、理解を深めていただくことが可能だと考えています。
対象者と講座の目的
この講座の主な対象者です。
- ひとり起業家の方
- マーケティングの上流設計に興味のある方
- マーケティングを理解したいと考えている方
- 企業のマーケティング担当者
- これから企業でマーケティングを実施していく必要のある方
- その他、ご自身でこれから起業していこうと思っている方
- オーナー社長様
本講座は、上記のようなマーケティングが必要とされている全ての方々を対象としております。
したがって、このコースはマーケティングに詳しくない方がメインの受講生となります。そうした方々が受けることで、マーケティングの全般的な理解を深めることができると考えています。
マーケティング業務に従事している方々にとって、新たな発見が数多く得られるような高品質な講座を提供しているつもりです。
講師紹介
講師である私、熊倉大輔をご紹介します。Udemyでは、いくつかの人気講座を提供しており、ベストセラーコースの講師をしています。私はデジタルマーケティングの専門家です。ひとり起業家のマーケティング支援をしています。
キャリアパスに関して言えば、私はまず大手の広告会社で働いてから、その後、大手の外資系企業でマーケティングを担当しました。それからマーケティングコンサルティング会社でも働きました。最終的に自分のビジネスを立ち上げ、オンラインビジネスの世界に進出しているところです。
さて、これからの章ではマーケティングについての幅広い概念から詳細にわたり説明する予定です。皆さんにとって有意義な内容になることを願っています。どうぞお楽しみにしていてください。
1.2 マーケティング戦略とは?
マーケティング戦略の基本
この章では「マーケティング戦略とは何なのか?」をご紹介します。この用語の中には「戦略」という単語が含まれています。まずはその「戦略」という部分に焦点を当て、より明瞭にしていきたいと考えています。戦略を理解するにあたり、対比されることの多い「戦術」という単語もあります。この両者を対比しながら意味の違いをはっきりさせていけるように説明していきます。
戦略と戦術の比較
山の頂上に達することを一つの戦略目標として設定します。
例えば、登山をする際に、初心者向けのやさしい道がある一方で、急な斜面を登る上級者に適したコースも存在します。
ゴールに向かうための道筋を決めるというところを戦略に例えることができます。初心者向けのコースを選ぶか、上級者向けのコースを選ぶか。戦略はいわばこのコース選びのようなものです。
一方で戦略が定めた目標に向けて具体的な進め方を考えることを戦術と言います。つまり、ゴールに至るプランが立てられた後、「この場所で必要な要素は何か?」や「どのタイミングで休憩を取るべきか?」などの詳細な計画を練るのが戦術の範疇になります。
もう少し説明を続けていきます。
たとえば、「大学合格」を目標に掲げる場面を考えましょう。
この目標を達成するためには勉強を続けなければなりません。しかし、特定の大学に入るためには、どの科目をどう勉強するべきかという戦略を最初に練ることが大切です。そして、そこから具体的な勉強に取り組む計画をきめます。それが戦術となるわけです。
戦略なしの戦術の問題点
戦術に集中し戦略を欠いた場合、試験に出ない分野の勉強を続ける可能性があります。
大きな効率の悪化が問題となりますね。例として、特定の大学のケースを挙げてみましょう。通常、試験範囲には一定のパターンが存在し、その範囲に絞って学ぶだけで済むことが少なくありません。その場合、得策は、勉強の方針(戦略)をあらかじめ決定しておき、必要な部分だけを学ぶ(戦術)という方法です。これが上手な学習法となるでしょう。
戦略の重要性
これらの例から見て取れるように、明確な戦略が存在しない状態で展開される戦術は、しばしば効率を損ない、遠回りを強いられます。あるいは最終的な目標に到達できないという事態を引き起こすリスクを孕んでいます。
「戦略」というのは、長期的な目標を設定するための全体的な計画や方針を定めることです。これには、組織の将来像や目的に沿って重要なリソースの配分や優先事項を決める一連のプロセスが含まれています。
「戦術」とは、戦略を達成するために用いられる特定の手段やアプローチを意味します。これには、短期目標を達成するための具体的な行動計画や実施活動が含まれます。
マーケティング戦略を策定しなければならない理由
マーケティングの分野にこの考え方を適応します。まずは戦略と戦術を示す図を使ってもっと詳しく説明しようと思います。マーケティング戦略とは、「誰に何の価値をどうやって提供していくのか?」を決めることです。登山でいうところのルートを決めるということですね。
このコースにおける学習のセクションは、戦略に関するものです。戦術は、その戦略の設計図に従って実行されるところです。
リスティング広告やMeta広告などの話ではありません。商品を売るうえでの根本を決めていきましょうということですね。
戦略なしの戦術の問題
戦略を持たないことに伴う問題点で同様の行動を何度も繰り返すことが挙げられます。これは一つの大きな問題点です。
学習ではテストに出ない部分に時間を費やしてしまうことが起こることがあります。マーケティングでは、狙っていないターゲットに広告が配信されてしまうという問題が生じることがあります。
また、その状態でPDCAサイクルを実行しようとすると、全く終わりが見えないPDCAサイクルを継続していかなければならなくなるでしょう。
例えば、デジタル広告において「バナーのCTRを向上させよう」という目的で広告の配信を行っているとします。
戦略を持たずにCTRを改善しようとすると、しばしば望まないターゲットに対する効率化を行ってしまいがちです。これにより、無駄が増えてしまうのではないでしょうか。
全体像が見えない部分最適の罠
大局を把握できない中で、局所的に最適化する落とし穴にハマることがありますよね。それにより資源の浪費や無意味な作業が生じることがあるわけです。
また、全体像の設計が甘い中での部分最適は次のような経営上にも大きな問題を起こします。たとえば、営業のスタッフには顧客からの注文をどんどん増やせ、という任務が課せられています。しかし一方で、カスタマーサクセスチームは業務が満杯で、これ以上の注文を受け入れる余裕がない、という状況が起こり得ます。
部分最適の観点からすると、営業部門は自部門内での効率化を図り、カスタマーサクセスもまた同様に自分たちの業務において最適化を目指します。このように各部門が独立して最適化を進めると、案件の獲得は順調に進む一方で、それに対応する能力が追いつかず問題が生じることになります。全体最適の視点で見た時に、これは大量のリソースの浪費や非効率な作業が生じる一因となり得るのです。
これが原因で、従業員のやる気が下がったり、環境の変化に順応できないといった状況が生じてしまいます。
戦略がない戦術の問題点まとめ
- Howの繰り返しになり、出口が見えない
- 全体像が見えない事で、部分最適の罠に陥る
- リソースの無駄遣い/無駄な業務が発生する
- 従業員のモチベーション低下
- 環境の変化への遅れ
- 成果が出ずらい
- 成果が出なかった場合の打ち手が分からなくなる
喫茶店のモーニングサービスの例を通して学ぶ戦略と戦術
もう少し身近な例を用いて、「なぜマーケティング戦略が必要なのか?」ご説明します。
カフェで朝食セットを用意していると想像してみてください。このセットはゆでた卵、トースト、そしてコーヒーの3点で構成されています。
ゆで卵は茹でるのに時間が必要なため、準備に5分を要します。トーストを焼くのには2分ほど掛かります。コーヒーはすぐに淹れることができるので、用意にはたった1分で済みます。
このようなカフェを運営する場合は、朝の時間帯において収益を最大にすることを目指し、そのための戦略を策定する必要があります。
たとえば、コーヒー担当だけがいくらがんばってコーヒーを淹れても無駄になりますよね。モーニングセットはゆで卵やトーストなど他の要素が揃っている必要があるからです。
私たちはこれらの変数をすべて最適化して、収益を最大する必要があります。それぞれの部分を個別に最適化すると、コーヒーは迅速に提供可能なので順調に供給できます。しかしながら、ゆで卵の在庫が不足してしまい、その結果ゆで卵が生産のボトルネックになり、朝食の供給能力に限界を生じさせてしまいます。
これらの事象は部分最適を目指した結果起こるものであり、朝食メニューの供給量を最大化するという目標を達成することが難しくなります。
戦略の重要性
これは単純な例ですが、戦略的な視点を持たずに部分最適化を図る際に生じうる問題であると私は考えています。
この場面では戦略が肝心ですね。例えば、ゆで卵を担うスタッフを増やすとか、卵の調理に時間がかかる為に調理器具を新たに追加するなどの対応が必要です。
そのような全体最適化を実現するために、戦略を立案することで、朝の時間帯における提供可能なモーニングセットの量を増加させることができます。これこそが、戦略を立てる目的と言えるでしょう。
マーケティング戦略とは?
繰り返しになりますが、マーケティング戦略とは「誰に何の価値をどうやって提供していくのか?」を決めることです。
マーケティングの戦略というのは、自社の市場内での役割を明確にし、どのようにして競争するか、またターゲット市場を定め、製品やサービスをどうやって顧客に届けるかという計画です。これは先に挙げたモーニングセットのケーススタディと同じ考え方です。市場を特定し、そこでの個々の戦術を洗練させ、顧客への価値を増大させることが、この戦略の核心となります。
図1.マーケティング戦略と戦術の整理
利益を最大にするための計画が存在します。この計画の下には、Google広告、メタ広告、LINE広告、CRM、マーケティングオートメーションといった多様なツールが含まれています。
戦略を立てずに、個々の最適化を行うだけでは、モーニングセットの例と同様に、成果を達成するのが難しいと感じています。
1.3 マーケティング戦略はどこから考えるべきか?
この節では、マーケティング戦略をどのような出発点で考慮するべきかについて検討していきたいと考えています。
最初に、質問を一つさせてください。この写真をご覧になってください。女性がマグカップを手にしているのが分かります。さて、このマグカップのブランドを担当していると仮定しましょう。あなたがそのブランドマネージャーだとしたら、…
会社から新しいマグカップの販売に取り組むようにと依頼されたとします。マーケティングの戦略を立てることがあなたの役目となりました。効果的に広告を実施し、このマグカップを市場に打ち出すための戦略をどのように策定すべきか、考えてみましょう。
少し時間をとって考えてみていただければと思います。
マーケティング戦略立案の難しさ
次のステップに移るとしても、このマグカップを市場に出すために何をすればよいのかは、とても複雑な問題だと思います。
どの市場を目指すべきか。どこにマグカップのライバルが存在するのか。広告の必要性はあるのかしら。現在の広告戦略はどうなっているのか。価格設定によっても市場の反応が異なると考えられます。いくらが適切な価格なのでしょうか。マグカップ市場の今後の展望はどうなんだろう。成長しているのか、それとも市場が飽和状態に達して低迷しているのか。マグカップはどんなシチュエーションで使用され、どこで販売すれば効果的なのか。現在、どんな場所で販売されているのでしょう。同業他社の製品はどのような販売チャネルを通じているのでしょうか・・・
それらの点も踏まえて、リサーチを行うために一度リサーチ会社へ問い合わせしてみるのも一つの手です。あるいはご自分で少し学んで本を読むことも良いでしょう。そうすれば、マーケティングには様々な枠組みが存在することに気が付くかもしれません。たとえば「4P」や「3C」、「STP」といった用語を耳にしたことがある人もいることでしょう。
益々混乱してきますよね。
顧客起点の戦略
マーケティング戦略を策定すると言っても、いったいどこから取り掛かるべきなのでしょうか。
考えることがたくさんありますし、世の中にも情報が溢れていますよね。
この回答についてですが、マーケティングの戦略においては、まず誰をターゲットにするか、つまりどの顧客に販売するのかが、そのすべての考え方の出発点となるのです。
「誰」というのがマーケティング戦略策定において最も重要です。その理由については後で触れます。
たとえば、「顧客起点の経営」や「顧客起点マーケティング」というテーマについて西口さんが著した本がありますが、その本にも書かれているように、西口さんは「お客様を中心に物事を考えるように」と述べています。
参考図書
戦略とは、別の言い方をすれば「考えるべき順序」とも言い換えられるものです。マーケティングの基本的な原理では、「誰に」→「何を」→「どのように」という流れで物事を考えることが最も重要なアプローチです。
「誰」から始めるべきか、すなわちどうして顧客を起点として考えなければならないのかという点についてですが、購買行動は全て顧客によって開始されるためです。
お客様によってその後のプロセスがすべて異なるというのが最も大きな理由です。お客様が異なれば、このマグカップの販売戦略や市場、価格設定もすべて異なってくるのです。
顧客中心のマーケティング戦略
この瞬間に女性が手にしている魅力的なマグカップですが、これが男性によって購入されることは考えられるでしょうか。
おそらくこのマグカップの購入者は多くが女性だと考えられますよね。実際に男性か女性かによって、マグカップの市場は違ってきます。具体的には、価格や色、デザイン、さらには競争相手に至るまで、すべてが変わります。その変動の理由は、私たちがこのマグカップを誰に販売したいのかという目的に依存しているからです。
顧客を絞る重要性
たとえば、私がコンサルティング業務を行っている際に、以下のような質問を受けることがあります。「私たちのサービスのターゲットは全員です。顧客層を絞り込むことで、損失してしまうチャンスはないでしょうか。」
この答えについて述べると、お金や時間、人などのリソースが無限にあるとしたら、特定のターゲットに絞り込む必要もないのではないかと思います。
現実には、リソースは限られていますよね。全てのビジネスがその限られたリソースの中で最大限の成果を上げなければなりません。
資源には限りがあるため、勝算が高いと思われる対象者に焦点を当ててプロモーションやマーケティングを行うべきだということが、答えになるでしょう。
1章のまとめ:マーケティング戦略の基本原則
このセクションでは、マーケティング戦略を成功に導くための核となる思考法に焦点を当てて説明しました。お客様を出発点にすることの大切さを理解することが、極めて重要です。次からのセクションでは、マーケティングの心臓部である顧客理解をより深く掘り下げていきます。このプロセスを一緒に進めていくことを楽しみにしています。これでこの章は終了です。おつかれさまでした。
2章:WHOを考える
2.1 顧客とは?
この部分では、私たちは「顧客」の概念に焦点を当て、それが何を意味するのかをご紹介します。前章にて、マーケティングにおいて最も核となるのは顧客であるとお話ししました。
戦略を考えるということは、「Who(誰が)」から始めて、「What(何を)」、そして最後に「How(どのように)」というステップで進めることが肝心です。
それではここで一つ、皆様にご質問です。
「顧客というのはどういったものなんでしょうか?」
このような問いに対する経験は少ないかと存じますが、顧客とはどういう存在なのかを、もう少し詳細に考察していただけたらと思います。時間の許す限り、ここで一度立ち止まって、そのことについて思索していただければ幸いです。
顧客の分類
では、続けて説明しましょう。お客様には3つのタイプが存在します。以下の図をご確認ください。
図2. 3種類の顧客
その中の1つが「コア顧客」で、私たちが最も重点を置きたい、そして最も商品を届けたいと考えている顧客層を指します。
別の重要なポイントは「戦略顧客」です。これらは二番目に重要なターゲットグループとなります。これらのお客様を増やすためには、マーケティング施策を展開することが必要です。
最終的には、私たちは今後のビジネス活動で向けられる全てのお客様を含め、総体的に「全体顧客」と称しています。
顧客の具体的な定義とその重要性
顧客と一言で申し上げても、その詳細は容易には明確にならないことがあります。また、「お客様」という表現を用いても、それぞれ異なる特徴を持つ多種多様な方々が存在しています。
顧客層全体を考えると、とても幅広いターゲット層になりそうですが、徐々にターゲットを絞り込んでいき、重点を置きたい顧客の像を明確にすることが不可欠です。そして、その中心となる顧客が最も大切な顧客(=コア顧客)となるわけです。
マーケティングの中で最も重要なのは、コア顧客を明確し、その層に向けて商品やサービスの情報を的確に伝えることです。その顧客の数は確かに少ないかもしれませんが、より少数に集中してマーケティング活動を行うことが、極めて重要です。
企業の顧客定義の実情とその重要性
実際には、多くの企業が顧客の定義について明確にできていない状況があります。なぜ顧客の定義が重要なのか、この点について少し考察してみたいと思っています。
Q:NIKEのコア顧客は誰か?
スニーカーのケーススタディについて考えてみましょう。この製品の主要な顧客層は具体的には誰なのかを考えてみようと思います。もちろん私はナイキ社の代表ではありません。そのため、これは私個人の推測でしかありませんが、このサンプルを基にして分析してみたいと思います。
もし可能でしたら、皆さんがここで少し時間を割いて、「ナイキの主要な顧客は誰なのか?」という質問について考えていただけたらありがたいです。
NIKEのコア顧客の仮説
私が思うに、ナイキの顧客の一つには、きっとアスリートが含まれるのではないでしょうか。
アスリートがコア顧客と考えると、少し疑問が浮かんでくる方もおられると思います。
「ナイキが販売したいスニーカーを履く全ての人々の中で、実際にアスリートと呼ばれる人々は、数が非常に少ないのではないでしょうか?」
「NIKEのような巨大企業がアスリートのみを顧客対象とする戦略は筋が悪いのではないですか?」
A:アスリート
でも、アスリートって、スニーカーを履く人数に比べて圧倒的に少なくないですか?
顧客の解像度を上げる
顧客の解像度を上げていきましょう。
例えば、アスリートが約100人いるとした場合、それらのアスリートに熱狂するバスケットボールのファンが約10万人、さらに、日本国内のバスケットボールファン全体では約100万人、そしてスニーカーを履く人口が約1億人いると想定します。これはあくまで仮定の話ですが、大体このくらいの数値になると考えられます。
これについて、さきに述べた3種類の顧客に適用してみます。
図3. 3種類の顧客
バスケットボールに熱狂する顧客グループがコア顧客の外側にいて、彼らはおそらく10万人ほどいるでしょう。そのグループは戦略顧客に該当する可能性が高いですね。
戦略顧客の外側には日本国内のバスケットボールのファン数が100万人いて、さらに外円にスニーカーを履く人口を置くことができます。
このように顧客といっても、「もっともターゲットしたいコア顧客に向けてマーケティング活動をしていく」ということを意識してください。
NIKEが最も重視する主要な顧客層と言えばスポーツ選手たちで、この100名を中心にマーケティング施策を行うことになると考えます。
それではなぜ特定の少数の人々に焦点を当てる必要があるのでしょうか?
顧客の伝染性とその影響
それはコア顧客が口コミなどで情報を広めることで、その影響が戦略顧客へ伝播していくという構造があります。
要するに、熱心な支持者に焦点を合わせたプロモーション活動を行うことで、彼らがファンになるのです。このことを通じて、その傾向は戦略顧客やより広範な顧客全体へ広がっていきます。
「顧客は伝染して広がる」のです。
また逆のアプローチを考えてみます。顧客全体をターゲットにマーケティング活動をしていった場合、焦点が定まりません。明確に絞り込まれていないために、はっきりとした展開が見られず、商品の認知が広がりにくいという問題が発生します。
まず初めに最も優先すべきことは、「コア顧客」を特定し、彼らに熱狂的な支持者になってもらうことです。彼らの熱意が伝播することで、より広範な顧客層に影響を及ぼし普及させる、このアプローチがマーケティング戦略として筋の良いアプローチとなります。
コア顧客を定義しなければならない理由がここにあります。
コア顧客の定義
要約しますと、マーケティング戦略にとって最重要事項は、コア顧客の定義にあるということです。
「あなたの製品は具体的にどのような顧客を対象としていますか?」という観点は極めて重要な問いです。
次のステップとして、実際にどのようにコア顧客を特定していくかについて考察していきたいと考えていますが、それに移る前に、ペルソナを考えてみます。
2.2 ペルソナを考える
このセクションでは、ペルソナに焦点を当てて掘り下げていきます。マーケティング活動において欠かせないのは、顧客、特に核となるコア顧客を深く理解することである、と前章でお伝えしました。
この概念を踏まえた上で、ペルソナについて考えていきます。
ペルソナとはコア顧客を想像して考えることと言い換えることができます。
ペルソナについて説明すると、それはある種の架空の人物を意味しています。具体的に想像された一個人について、このような考え方を持ち、おそらくこのタイプであろうと予測される人物を、中心的なお客様像として特定していくアプローチです。
図4 ペルソナとはコア顧客を想像で考えることである
そのペルソナに対してプロモーション活動を展開する際には、どのようなアプローチが適しているのか、またどのような戦略が効果的かを検討するための指針を立てます。そのためにペルソナを構築していくのです。
例えば、ある人物の細かなデータを集めていくプロセスを想像してください。その人の年齢、性別、家庭環境、住んでいる場所、仕事の役職、収入、生活様式、趣味、信念など、実際の人物のように詳しく創り上げていくのです。この架空の個人像を基にして、宣伝戦略を構築することが、ペルソナ設定の主な目的です。
ペルソナの必要性
では、この「ペルソナ」という概念が本当に必要なのか、その根本的な議論をしたいと思っています。この点について少し深掘りしていきましょう。
このコースを受けている皆さまが、自身がビジネスオーナーであり、広告代理店やマーケティングコンサルティング会社からマーケティング戦略を提案される立場にあるとした場合、おそらくペルソナという言葉を耳にされることがあるでしょう。これは架空の顧客像を表すために使用される専門用語です。
私たちが重点的に対象としている人物について、このような文脈で議論されることがしばしばあります。あなたの中にも、そのような提案を受けた経験がある方がいるでしょうし、さらに中には自らペルソナを考え作成したことがある方もいるかもしれません。
それが必要かどうかについては多様な観点が存在しています。私の考えとしては、もし使わなくても問題ないのであれば、ペルソナを使わずに済ませるほうが良いということです。
顧客がまだ一人もいない場合は?
お客様が一人もいらっしゃらない状況で、新しい商品を発売したい時など、ターゲットとなる顧客像(ペルソナ)をしっかりと考えることは非常に重要です。というのも、お客様がいらっしゃらないため、インタビューを行うなどして顧客についての詳細を把握することが難しく、情報を具体化することが困難だという課題があるからです。
しかし、すでに顧客が存在している状況ならば、架空のペルソナを作成するより、実際に購入経験のある人々、つまり顧客にインタビューを行うことによって、コアな顧客層の細かい特徴や理解を深めることができます。
インタビューが叶わないか、既存の顧客が皆無の場合、やむを得ずペルソナの活用を行うといったアプローチが有効です。
このあたりは、以下の西口さんの記事も参考にしてみてください。
参考:
【マーケティング入門第3回】顧客インタビューって必要ですか?
ペルソナと既存顧客
多くの人がペルソナの意味を正しく理解していないことがあると思いますが、実際には顧客がいるにも関わらず、しばしばペルソナを架空のキャラクターとして想像してしまう傾向があります。
もちろん、楽をしたいとか労力を削減したいという事情が働いているかもしれません。しかし根本的には、コア顧客のことを理解しようとするなら、直接コア顧客自身に尋ねるのが最も効率的な方法だということを理解しておいてください。
次に、2番目の重要なポイントを述べます。既に貴社の製品を手に入れている方々は、いわゆる主要な顧客となりうる、あるいはすでに主要な顧客である可能性が高いと私は考えています。
マーケティングの戦略では、一人の顧客の考えに共感するような人々を増やすことが重大な要素です。したがって、既存のお客様にインタビューを行い、似た属性を持つ人々をどう増やせるか、あるいは同様のターゲットにどのように接近できるかを検討するのが良策だと思われます。
ここでは、一旦「ペルソナ」という概念を整理して理解していただければ幸いです。次のセクションでは、核となる顧客の特定に際しての考慮点を解説していきたいと思っています。このセクションはこれで終了です。お疲れ様でした。
2.3 コア顧客を考える
ここでは重点的に取り上げるべき顧客層に焦点を当てていくつもりです。少し戻ってみれば、マーケティングの中核をなす要素は、コア顧客、すなわち最もターゲットとしたい顧客を定義することだとご理解いただいたかと思います。
コア顧客を特定する際に検討すべき4つの重要な要素をご説明します。まずは市場の大きさ、次に商品やサービスの市場との相性、そして市場の成長性、最後にその商品やサービスが伝播する力です。これらの要点を踏まえて、理想のコア顧客像を明確にしていけると思います。これから一つ一つ詳しく説明をしていくつもりです。
これらの4つの要素については、実際のワークショップの中で改めて深く検討していく予定ですので、今はその説明を大まかに理解していただくだけで結構です。
図4 コア顧客を特定するための4つの要素
①市場規模の重要性
顧客が存在すると想定される市場の規模を考察します。例として、商品がチェアだとします。
コア顧客:熱心なゲーマー
市場:自宅で据え置き型のゲーム機で長時間プレイするユーザーの人数
を考えることになります。そうしたニーズのある市場がどの程度の規模なのかを推測します。
この規模がビジネスへの影響を及ぼす程度、一定の大きさがあるかどうかが評価の基準となる点です。
②市場との相性(市場フィット)の考察
二つ目の要素は市場適合性です。製品がその市場にどの程度適合しているかを検討します。例えば、チェアについて考えてみましょう。ゲーマー向けの市場の他にもリモートワーク用のオフィス設備としての市場も存在します。しかし、そのような市場では、ゲーマー向け市場ほど適合性は劣ると考えられます。これが二番目の市場適合性の要点です。
③市場成長の重要性
市場に成長性があるかが3番目の要点です。市場が全体的にどれだけ成長するかということが重要です。たとえば、ゲーマー市場の成長率が1である場合、リモートビジネス市場の成長率は2であると考えるような具合です。
④伝染力の評価
第四の要素は伝播力に関するものです。コアな顧客層から戦略的な顧客層、さらには顧客全体に商品やサービスが浸透するかどうか。伝播しやすいかどうかについての理論的根拠の有無を評価していくことが重要です。
たとえば、NIKEがアスリートに使用されることで、一気に注目され市場に広がるような現象が起こり得るか、です。
時にはこのような強力な伝播力を持ったケースも存在します。逆に特定の市場に成功して浸透しても、他へは感染が広がらない市場もあります。
例えばゲームをする人達の場合、彼らはネットワークを強く持っていると仮定します。リモートビジネス界隈よりも多くの人へ伝染するように情報が広まる可能性があると思われます。このシナリオで言うと、「伝染力」はゲーマーで3に設定し、反対にリモートビジネスでの伝染力は2と考えるといった具合です。
コア顧客の定義と実務への応用
これらの4つの要素を用いてコア顧客というものを特定していきたいと考えています。このレクチャーをお聞きになり、その4つがどういったものかご把握いただけたと思います。
ただし、これがどのように使用されるか具体的にはまだ説明しておりません。ですので、今のところは、ここに4つの主要なポイントが存在することを覚えておいていただけると幸いです。
このワークショップを後ほど進める過程で、私たちはこの枠組みを活用して、核となる顧客について共同で分析していく実務作業を行う予定です。そこで、この理論についてのご理解をさらに深めていただけるのではないかと考えております。
ワークショップによる理解の深化
現時点では、これら4点について、それぞれの核となる顧客層の特定に必要なことを理解する必要性は少ないかもしれません。
ワークショップでは、参加者が実際に手を使ってターゲット顧客を特定する作業をします。このプロセスを体験していただくことで、理解が深まると考えております。もし将来、その定義について不明な点が生じた場合は、このセッションに戻って講義の内容をもう一度確認していただければ幸いです。
この4つの属性の中でも、「感染力」に関しては、それがどのように発生するのかは少し複雑です。詳細な説明がないと、深く理解するのが難しい部分があるかもしれません。
次の章では、この4つの要素の中でも特に「伝染力」に焦点を当て、どのような状況で伝染が発生するのかを検討していく予定です。
この章は以上になります。お疲れ様でした。
2.4 伝染力を考える
この節では、伝達力という点を重点的に掘り下げます。おさらいとなりますが、これは重要なポイントなので、簡単に見直しをしていくつもりです。マーケティングの最も重要な要素は、核となる顧客層に焦点を当てることです。顧客には明確な定義がいくつかあり、とりわけ私たちが最も注目すべきは、ターゲットとする特定のお客様をコア顧客と呼びます。そうしたコア顧客に対して、広告などを通じてその価値をしっかり伝えていくことが、最も重要な戦略であると説明してきました。
伝染力の重要性
また、コア顧客が数が少なく、市場が巨大だとは限らないにも関わらず、なぜ私たちが彼らを重視すべきなのかという疑問があります。その理由は、顧客が感染のように影響を及ぼし、広範囲に広がっていく性質を持っていると考えるからです。
図5 顧客は伝染する
重要視されるべきは、感染力です。コア顧客から戦略顧客へと影響が広がるロジックが存在するか否かを検討します。
伝染力の具体例
前の章で述べたナイキのケースに見られるように、特定のアスリートが使うことによって製品が急速に普及する場合があります。そのアスリートと彼らの熱心なファンが顧客層となっているのです。
椅子について言えば、ゲーマーに人気で評価の高い椅子は、彼らのコミュニティ内で急速に普及すると思われます。しかし、リモートビジネスの分野ではゲーマーのように強い相互関係がないため、同じように広がることは難しいと想定できます。
伝染力の要素
このようにターゲットとする顧客層により市場における影響力や拡散の仕方には差が生じます。さて、影響力の強い重要な顧客とは具体的にどのような人々なのかを考察していくつもりです。その際、重要となる要点が3つあります。
①影響力:
対象市場に大きな影響力を持つ重要な顧客に注目が集まります。最近特に話題となるのはインフルエンサーやYouTuber、そして一部の著名人たちです。ナイキを例に挙げると、熱心な支持者を抱えるアスリートがその製品を使用することで、そのアスリートが持つコミュニティ内での影響力は大きく、それが外部にも広がりやすい、といった具体的な顧客像を指しています。
②コミュニティ:
強い横の結びつきを持つコミュニティが存在しています。ゲーマー、特定のアイドルのファン、スポーツ愛好家などがその例です。こういったコミュニティでは、ある情報やトレンドが急速に広がり、その流行がコミュニティの外にも波及し、他の人々の関心を集めることになるのです。
③信用:
B2Bの環境では、信頼性の高い特定の顧客がいることが一般的です。たとえば、大手企業、公的機関、銀行などが製品を採用している場合、それを見て他の人々は製品が信頼できると感じ、安心することがよくあります。
伝染力の総合的考察
これらの要因を踏まえて、強い影響力を持つコアな顧客層の定義が重要になってきます。これらの要点は互いに連携し合っており、考慮する上で役立つ手がかりとなります。例えばNIKEがアスリートを起用しているケースでは、影響力、コミュニティ、そして信頼性という3つの主要な要素が融合しています。
これまでの議論では、マーケティング戦略を策定する上で最も重要な要素である顧客に焦点を当てて考えてきました。しかし、実際に自分自身でマーケティング活動を経験してみることでなければ、理解を一層深めることは難しいと考えられます。
ワークショップの準備を進めていて、参加者の皆さんと一緒に資料を完成させるつもりです。私自身も既に記入した資料がありますから、それを参考にしながら皆で戦略を練る学習過程を共有したいと考えています。
次章では、このトピックについてくわしく解説する予定ですので、どうぞご期待ください。これにて私の説明は終わりです。ご苦労様でした。
2.5 ワークショップ1 - 顧客
ここはワークショップをしていきます。
みなさま、ワークシートはお手元にありますか?なければ、こちらからご指定のメールアドレスへ送付いたします。
このスプレッドシートは皆様が一人でマーケティング戦略を立案できるようになることを目的として内容を作りました。実際に操作しながら講義をお聴きになることをお勧めします。
これまで「顧客」に関する様々な知識を学んできましたが、今回はそれらを一旦忘れて、貴社またはあなた自身が提供する商品のターゲット顧客について、自由に考えを広げてみてほしいと思います。
顧客の発散フェーズ
シート名:1顧客を考える
できるだけ多くのお客様と、お客様が抱えている問題点について、思い浮かぶ限り教えていただきたいです。気軽に「このような方が利用者かもしれない」と考えたり、既にお付き合いのあるお客様を思い出して、その情報をお客様の欄に書き加えていただけると幸いです。
顧客の具体例と課題
たとえば、「歯を磨く習慣がない子供の保護者」というターゲットを設定して、その困りごとについて考察してみます。矯正治療中であれば、歯ブラシの毛が硬すぎると子供の歯肉を傷つける可能性などの問題が生じるかもしれません。もう1つのケースとして、「既に電動歯ブラシを愛用している子供の保護者」を例に挙げることができますが、こちらでは電動歯ブラシの動作不良や品質に関する課題が挙げられるでしょう。
サンプルは「1顧客を考える例」のシートをご確認ください。
顧客像の多様性
お客様ごとに抱える問題は様々です。幼稚園入試を考えている親の場合、早いうちからの適切な歯磨きや躾の必要性という課題があります。忙しい保護者にとっては、お子さんの歯磨きの監督に割く時間がない、コストがかかる、事故が起こるのではないかというような懸念が課題となることが予測されます。
この講義では、自社製品に関心を持つであろう様々なタイプの顧客にフォーカスし、それぞれが直面している問題点を明らかにしていきます。これらのワークが顧客を理解する段階において非常に重要だということを学びます。
お客様の問題点は、「何が欠けているのか」または「何が存在しないのか」という形で述べられることが多いです。これから行う作業をスムーズに進めるために、問題点を否定的な表現で把握していただくと作業がしやすくなります。
ワークショップの注意点
発散フェーズでは、深く考え込まず、リラックスして多数の顧客のアイデアを思いつくようにしましょう。アイデアが重なっても問題ありません。内に秘めた考えをすべて外に出すつもりで、自由に進めることが良いでしょう。
このワークショップでは、具体的な作業を行いながらフォームに入力していただき、それを完了したら次のセクションに進むことをお勧めします。そのように進めることで、理解がより深まることでしょう。このセクションはこれで終了です。ご苦労さまでした。
コア顧客を考えるワークショップの注意点まとめ
- 発散フェーズです。なるべく多くの顧客と課題を出してみてください。重複していてもOK。
- すでに顧客がいる商品であれば、特定の人を思い浮かべて書いてみてください。
- この段階では、顧客はニッチでも幅広い顧客でもOK。とにかく様々な顧客を書き出すことが重要です。
- 顧客課題は、「~が不足している、~がない」という否定形をできるだけ意識して記載していきましょう。
3章:WHATを考える
3.1 価値を考える
この章では、どういう「価値」を提供するかについて探求していきましょう。これまでの部分では「誰に」、即ち顧客目線に立っていた段階です。多くの顧客を挙げて、各顧客が抱える問題を5〜6個挙げてみたことでしょう。ここからは、それらの顧客にどのような利益やメリットをもたらすことができるのか、つまり提供する価値に焦点を当てていきます。
価値提供の重要性
「お客様にとって、あなたのブランドがどのような価値をもたらすのか?」が、このWhatの段階でのとても重要な質問です。顧客によっても、競争相手は異なり、提供する価値も変わってきます。例として電動歯ブラシを挙げると、顧客ごとに価値できる価値が異なります。これについて、一緒に詳しく見ていきましょう。
重要なポイント
- そのブランドは、顧客にどのような価値を提供しているのでしょうか?
- 顧客が異なれば、競合も異なり、提供する価値も異なる
顧客別価値の具体例
例えば、(架空の商品ですが)電動歯ブラシを例にご説明します。
例1.
顧客 | シングルマザー |
課題 | 歯磨きを見てやる時間がとれない 値段が高い 感電・通電などの事故が心配 歯磨きを見てやることが手間 医者にお金をかけたくない |
この場合、シングルマザーに喜んでいただける提供できる価値は、「手間と値段」かもしれません。
例2.
顧客 | 子供を幼稚園受験させた(させる)親 |
課題 | 幼稚園の受験で最低限必要 しつけをちゃんとしたい 品質の良いモノに触れさせていたい 他の子に遅れをとりたくない 時間効率が悪い |
この場合、子供を幼稚園受験させた(させる)親に喜んでいただける提供できる価値は、「教育と躾」かもしれません。
シマママさんにとって、手間がかからないことやコストの価値が理解いただければ、電動歯ブラシを購入していただける可能性があります。一方で、受験生のお子様を持つ親御さんは、教育や躾けに価値を置いており、それを満たす電動歯ブラシであれば興味を持ってもらえるでしょう。
2つの価値
価値は、独自価値(POD: Point of Difference)と共通価値(POP: Point of Parity)という二つのタイプに分けられます。独自価値とは、自社のみが顧客に提供可能な特別な価値のことです。一方、共通価値は、自社と競合他社の両方が提供できる顧客にとっての価値です。もし長期間に渡って顧客に対し独自の価値提供ができない場合、価格競争に陥るリスクがあるのです。
競合と共通する価値を提供するのはもちろんのこと、より大切なのはあなたの商品やサービスのみが顧客に提供できる価値です。
2つの価値
- 独自価値(PoD:Point of Difference)
- 自社でのみ顧客に提供できる価値
- 共通価値(PoP:Point of Parity)
- 自社でも競合でも顧客に提供できる価値
価値創出のモデル
新しい価値は既存の価値の組み合わせによって創出されます。
例えば、「美味しい、速い、低価格」という吉野家の価値観は、異なる価値を組み合わせることの典型例です。異なる価値をミックスすることによって新たな価値を生み出し、それが独自性のある価値を作り出す上での鍵となります。
ここで一つ質問をさせてください。
Q:「スタバ」と「ドトール」と「セブンイレブンのコーヒー」の3社が提供している価値とは?
スターバックス、ドトールコーヒー、セブン-イレブンの3つの企業は皆、コーヒーを売っていますよね。だから、共有される価値というものがあると言えそうです。いかのようになります。
共通価値(PoP):コーヒーを提供している
独自価値(PoD):?
それではそれぞれの独自価値(PoD)はなんでしょう?少し考えてみてください。
独自価値は異なる
スターバックス、ドトール、セブン-イレブンが提供するコーヒーには各々の特色があります。スターバックスは快適な雰囲気と多様なコーヒーメニューを、ドトールは使い勝手の良い立地と一貫した味を、セブン-イレブンは低価格と手軽さを、それぞれの強みとして顧客に提供しています。
各社の独自価値の例
スタバ | 居心地 × コーヒーバリエーション |
ドトール | 立地 × 安定した味のコーヒー |
セブンコーヒー | 立地 × お手頃価格 |
マーケティング戦略とは、ターゲット顧客にどのようなメリットをもたらすかを明確にするプロセスです。最も重要な点は、どのような顧客に焦点を当てるかを特定することにあります。顧客によって直面している問題はそれぞれ異なり、それに応じた価値を提供することになります。次のセクションでは、顧客が抱える問題点にさらに深く掘り下げていきます。
3.2 課題を考える
このセクションでは、課題についてのアプローチを見ていきます。重要なのは、顧客が自分の問題を言葉で表現できない場合でも、その本質的な問題を理解することです。
顕在課題とコア課題
課題を明確に顕在的な部分と根本的なコア部分とに区分し、それぞれ別々に分析することができます。お客様が直面している問題は顕在課題として表れますが、それをさらに詳細に調べ、真に根本的な問題、すなわちコア課題を掘り下げることが肝要です。このコア課題を明確に表現することが、課題解決のプロセスにおいて重要な鍵となります。
図6. 顧客の真の課題は、顧客自身が言語化できていない所にある
たとえば電動歯ブラシに関する話で分かりやすく伝えましょう。シングルマザーが直面している子供の歯を磨くことに関する多くの問題点があります。こうした問題から、実際の根本的な課題を見つけ出し、それに基づいて仮説を立てることが大切です。
顧客 | シングルマザー |
課題 | 歯磨きを見てやる時間がとれない 値段が高い 感電・通電などの事故が心配 歯磨きを見てやることが手間 医者にお金をかけたくない |
さらにこれらの様々な課題から真の課題「コア課題」を想定します。今回は、コア課題は「電動歯ブラシは値段が高くて手が出ない」と想定しました。
表層にある課題ではなく、本当は困っていることはなにか?という問いが重要になります。
コア課題を考えるためのフレームワーク
コア課題を考えるためには、以下の「4つの不足」を手がかりに考えていきます。
- 人の不足:例えば、社内のリソース不足など。
- ものの不足:手段や方法、技術の不足。
- お金の不足:例えば、高級ステーキが高くて手が出ない場合など。
- 情報の不足:顧客データがないなどの情報不足。
これらのコア課題に対して、適切なソリューションを提供することが重要です。
課題の具体的な言語化プロセス
コアの問題点を明確に表現するためには、表面上の問題から出発し、上記の4つの要素を手がかりにしてより深く分析する作業が欠かせません。そうすることで、実際に顧客が直面している困難を特定し、それに対する解決策を提案することが可能になります。
この重要な問題についての検討を、次のワークショップで共に進めていきましょう。お客様が直面している問題を、その表層だけでなく、もっと深く分析し理解することが大切です。このセクションの解説はこれで終わりです。ご苦労さまでした。
3.3 ワークショップ2 価値定義
こちらから次のハンズオンワークショップのステップ2を始めましょう。この段階では、「顧客への価値提供」についてに取り組みます。
ダウンロードがまだの方はこちらからワークシートをダウンロードしてくださいね。
ワークショップの内容と進行方法
ワークショップでは、「2. 顧客に価値を提供する」というトピックに沿って、用意されたスプレッドシートのテンプレートを使用して作業を行います。
ワークシートの以下を使用していきます。
ワークシート1にて取り組んだお客様とその主な問題点について振り返りを行います。数人の顧客に関して、各々5から6つの課題を洗い出していただいたかと思います。そこから、主要な3人の顧客を選んでこのシートに記入し、それぞれの顧客に関係する2から3つの重要な課題を挙げてください。
顧客価値を考えるワーク①
顧客は、その中でメインと想定されるものを3つ、このシートに転記してください。
課題は、出していただいた中でメインとなるものを転記してください。
顧客価値を考えるワーク② コア課題と競合を考える
次に、我々はコア課題にフォーカスしていきます。重要なのは、顧客がまだ言葉にできていない本当の問題を理解することです。表面上見える問題点を掘り下げ、根本的な問題を明確にする必要があります。さらに、競合についていうと、顧客ごとに異なる状況があるため、インターネットでの調査や自社製品の詳細な知識を使って、それを明記することが大切です。
以下の赤枠にコア課題を記載していきます。
次に以下に競合を記載します。競合は顧客によって異なりますよね。調べて記載してきましょう。
顧客価値を考えるワーク③ 2つの価値を考える
価値に関しては、二つの側面、すなわち共通価値と固有価値に焦点を当てて分析します。競合他社と比較し、どのような共通点と独自の特徴があるのかを詳述します。
その競合と照らし合わせて、共通で提供している価値、独自で提供している価値を記載します。顧客が異なれば、共通価値、独自価値も異なります。
2つの価値については既に学習したこちらを参照ください。
価値の分析とスコア付け
市場での優勢を明らかにするためにもスコアリングを行います。競合優位性、市場規模、市場フィット、市場成長、伝染力といった項目に最大5点まで点を付けて、総合的なスコアを導き出します。
どこのマーケットが優位なのかを可視化するために、各指標で5点満点でスコアをつけてみてください。
このスコアはあくまで参考値となりますが、これを参考にどこの市場で戦っていくのかを意思決定します。
伝染力(または伝播力)を評価する際には、影響度、コミュニティ内での地位、信頼性の三つの要因を検討します。例えば、インフルエンサーや大手企業が核となる顧客である場合、その感染力は高いとされます。得点は感染力の程度に基づいて決定されます。
伝染力については既に学習したこちらをご参照ください。
最終的なマーケティング目標の決定
このワークショップを終えると、マーケティングの中心となる「誰にどんな価値をもたらすか」という問いへの答えがはっきりとしてくるはずです。
このワークを終えると以下のようにシートが完成するはずです。
このシートの一番右のカラムに「最終スコア」が出ていると思います。このスコアが高ければ高いほどより魅力的な市場であると考えていきます。
このワークショップを完了すれば、「誰にどのような価値を提供するのか?」というマーケティングで最も大切な質問へ、おぼろげながら回答できるようになっているかと思います。
次の章から、さらにブラッシュアップしていきます。
4章:WHO×WHATを考える
4.1 提供する価値を考える
先程のセクションで実施していただいたであろうワークショップについてですが、少し時間が掛かる作業だったかもしれません。しかし、その重要な活動を終えた後で、続きを進めていただければと思います。
こちらでは、収集された情報を基にして、マーケティング戦略の核心部分をどう構築するかについて考察します。
ワークシートの2顧客価値例のシートを見ながら進めていただければと思います。
今回私達は、子供向けの電動歯ブラシを事例にとり、三種類のお客様に関しての核となる課題や価値、さらにはユニークな価値点を挙げて評価しました。その中で最も得点が高かったお客様グループを主要な対象顧客と位置付け、そのグループに焦点を当てたマーケティング戦略を展開していくことにします。
ワークショップを通じて定義された要素
これまで2つのワークショップを行い、以下の3点を定義しました。
「コア顧客」
「コア課題」=コマーシャルインサイト
「コア価値」=バリュープロポジション
まず最初に、コアな顧客層を特定し、どの消費者にマーケティング活動を行なうかを決定しました。次に、コア課題を明確にしました。この段階では、「習慣化を促す方法がない」という明らかな問題点から始めて、より深く分析し、具体的に表現しました。そして三番目に、コア価値を表現しました。これは、他社との比較で認識できる、私たちだけが提供可能な独自の真価を明確にするものです。
電動歯ブラシの例はワークシートをご覧ください。
参考:マーケティングの分野では、「コア課題」をコマーシャルインサイトと称し、「コア価値」についてはバリュープロポジションと表現することがあります。
コア顧客、コア課題、コア価値の整理
今回の例では以下のようになります。
コア顧客は、歯磨き習慣を持っていない子供の親です。
コア課題は、習慣化を促す方法がないという点です。
コア価値(独自価値)としては、習慣化のための教育アプリが挙げられます。
この情報をまとめると、「私たちの商品は、歯磨き習慣を持っていない子供の親の習慣化を促す方法がないという課題に対して、習慣化のための教育アプリ付き電動歯ブラシを提供します」となります。
解像度がかなり向上してきたと思います。電動歯ブラシがどのような顧客に対してどのような価値をもたらすかがはっきりとしてきたのです。次のセクションでは「カテゴリー」という概念が中心的な役割を果たすことになるので、それについて説明します。
4.2 カテゴリと想起
ここでは「カテゴリー」と「想起」について説明します。
これまでの章において、マーケティングの中心となるコア顧客、コア課題、コア価値という重要な3つの要素を定義しました。
例えば、歯磨き習慣を持っていない子供の親という顧客、習慣化を促す方法がないというコア課題、そして教育アプリが付いている電動歯ブラシという独自価値を定義しました。
私たちの商品は、「歯磨き習慣を持っていない子供の親の習慣化を促す方法がないという課題に対して、習慣化のための教育アプリ付き電動歯ブラシを提供します」という定義をしてきました。
次は自社の商品がどのカテゴリーに属するかを定義する必要性について議論していきます。
商品のカテゴリー定義
商品のカテゴリを決めるという行為は、「私たちの販売するものとは一体何か」という基本的な疑問に応える作業です。
たとえば、例題に出している電動歯ブラシを例に考えます。
商品は教育的なプログラムか、習慣を身につけるためのプログラムか、幼稚園受験の準備を助けるプログラムか、それともエンターテインメント関連のプログラムか。
それをはっきりさせることが重要です。時には、商品がいくつかのカテゴリに跨がっている場合もあります。
商品の想起とカテゴリー認識
「そのブランドは生活者からなにと認識され想起されますか?」
製品が消費者にどのように認識されるか、また思い出されるかを決定することは非常に重要です。たとえば、電動歯ブラシが単なる電動歯ブラシとしてではなく、子どもたちの教育プログラムの一部としても見られることが肝心かもしれません。これはカテゴリー定義と呼ばれる概念であり、マーケティング戦略における要点の一つです。
想起の重要性
「〇〇について話す時、どのようなものが頭に浮かぶでしょうか」と問われた際、その質問に対して受け手が自然と連想するブランドのことを「純粋想起」と称します。
たとえば、「自動車」という言葉を聞いたときに、すぐにトヨタのイメージが頭に浮かぶ場合、これはトヨタが自動車のカテゴリーで「純粋想起」の地位を得ていることを意味します。
さまざまな商品のカテゴリーで、最初に頭に浮かぶブランドを「第一想起」と呼ぶことがあります。例えば、コンピュータ、化粧品、カフェ、インスタント麺などを例に考えてみます。
- 自動車と言えば?
- パソコンと言えば?
- 化粧品と言えば?
- コーヒーショップと言えば?
- カップ麺と言えば?
一番最初に想起されるブランドのことを「第一想起」と呼びます。マーケティング戦略において、重要な事の一つは、「第一想起を獲得すること」にあります。
私は、ある特定の商品を扱っている外資系メーカーにいたことがありますが、その商品は、あるカテゴリにおいて圧倒的な第一想起を獲得しています。そのため圧倒的に商品が売れるのです。
カテゴリーでの第一想起を目指す
あなたの商品は、特定のカテゴリにおいて、一番最初に想起される必要があります。特定のカテゴリは、新しく創出することもできますし、既存のカテゴリで想起を取りに行くこともできます。
一般的に新しいカテゴリの創出は難易度が高くなりますが、あなたの商品しかないカテゴリなので、成功すれば大きなインパクトを出すことが可能です。
以下の章で、カテゴリに関する議論を深めていきます。このセクションの解説はこれで終了します。お疲れ様でした。
4.3 カテゴリを考える
ここではカテゴリーについての考察をもう少し深めていきます。「自動車」といったときに第一想起を獲得することの重要性について前章で触れました。
あなたの商品が特定のカテゴリーで第一想起となるように、一番最初に思い浮かぶようなカテゴリーを指定して戦っていく必要があります。そのカテゴリーを総取りすることが重要になります。
カテゴリーの注意点
カテゴリーは、生活者が想起できるものでなければなりません。複雑なものは想起されないため、簡単に理解できるカテゴリーが望ましいです。BtoB商品の場合、カテゴリーが一般の人には理解しにくいことが多く、それは良くないカテゴリーに該当します。売った場合に「ああ、あれね」と理解できるようなカテゴリーを指定する必要があります。
カテゴリーの選択
カテゴリー選定は将来的に顧客に優先的に思い浮かばれるようなものでなくてはならず、過度に広範囲な場合には特定の範囲に絞り込むことが求められます。たとえば、カップラーメンの市場で競争する際には、既に市場に確立されたブランドがあることから、カレー風味のカップラーメンのように、さらに明確なカテゴリーを選定することが肝要です。
子供用高級電動歯ブラシのカテゴリー選択(事例)
例として、子供用の高級電動歯ブラシカテゴリーを考えてみます。このカテゴリーは電動歯ブラシ全体よりも絞り込まれていますが、さらに習慣化や教育にフォーカスした高級な電動歯ブラシ市場にまで絞り込み、第一想起させる状態を目指します。
あなたの商品が特定のカテゴリーで第一想起となるためには、戦うカテゴリーを絞り、明確にする必要があります。
次章では、情報を体系化し、新たな価値観を見出すことに焦点を当てます。もしまだカテゴリー整理が完了していないなら、このタイミングでいったん停止し、自分が取り組むべきカテゴリーがどの領域にあるのかを熟考してみてください。
これで本章の説明は以上です。お疲れ様でした。
4.4 ワークショップ3 新しい価値を考える
この章では「新しい価値を考える」というテーマで進めます。これまでのワークを通じて、顧客、コア課題、コア価値、そして最後にカテゴリーを決定してきました。
今回の例では、顧客は歯磨き習慣を持っていない子供の親、コア課題は習慣化を促す方法がないこと、価値は習慣化のための教育アプリ、そしてカテゴリーは子供用の高級電動歯ブラシ市場です。このカテゴリーで第一想起を目指します。
図5. 電動歯ブラシのカテゴリを決める
価値のブラッシュアップ
価値は基本的に既存の価値の組み合わせから新しい価値が生まれます。今回の電動歯ブラシでは、アプリとの連動が新しい価値の創造です。アプリで楽しく習慣化を促す子供用電動歯ブラシが新しい価値の提供となります。
価値の創造の考え方についてはこちらを再度ご確認頂ければと思います。
※今回の事例での新しい価値の提案
新しい価値: 「アプリで楽しく習慣化を促す子供用電動歯ブラシ」
ワークショップの進め方
ワークショップでは、お客様のニーズや問題点、分野についての情報を整理し、新たな価値を提案することを目指します。例えば、電動歯ブラシにおいては、アプリケーションと電動歯ブラシのそれぞれのメリットを融合させ、子どもたちが楽しく歯磨きの習慣を身に付けられるような新しいタイプの製品を考案します。このようなアイデアを言語化し、進むべき戦略を築いていくわけです。
ワークシートの「3戦略定義」及び「3戦略定義例」を用いて次の講義を進めていきます。
図6.子供用 電動歯ブラシの戦略定義
マーケティング戦略の形成
これを整理した結果、マーケティング戦略の主要部分が確立されていきます。「当社の製品は、子供向け高級電動歯ブラシという市場で、アプリケーションを使って楽しみながら習慣づけるという革新的な価値をお客様へ提供する」という方針が戦略の中核をなします。この戦略を完成させることは、マーケティング計画全体の約8割を形作ることになります。
次の章では、策定した戦略を遂行するための明確なアクションプランと、それがマーケティング戦略とどのように統合するかを検討します。このフェーズでの品質が優れていれば、ほとんどの競合他社より優位に立つことができます。
これで本章の説明は以上です。お疲れ様でした。
5章:HOWを考える
5.1 商品が売れるメカニズムを考える
それでは、このセクションで「HOW」に焦点を当て、これまでに構築したマーケティング戦略をどのように実際の業務に応用していくかについて掘り下げていくことにします。
商品の販売メカニズムに関して最初に理論的な解説を行います。消費者が商品またはサービスを買う過程を表すモデルはいくつか存在しますが、ここでは特に代表的な2つのモデルを紹介する予定です。
AIDMAの法則
まず初めに紹介するのは、「AIDMAの法則」というものです。1924年にサミュエル・ローランド・ホール氏によって発表されたこの法則は、顧客が商品を購入するに至るまでの認知的変化の過程を解説しています。この過程は、商品に気づき始めることでスタートし、次いでその商品に関心を持ち、欲求が湧き上がり、その後商品を覚えておき、最終的には実際に購買行動へと移行するというステップを踏むことを意味しています。
- Attention: 注意
- Interest: 興味、関心
- Demand: 欲求
- Memory: 記憶
- Action: 行動
※参考に、このAIDMA法則は、1924年にサミュエル・ローランド・ホール氏が著した「Retail advertising and selling(小売業の広告と売り方)」にて紹介された、消費者が広告にどう反応するかを説明したモデルです。
AISASの法則
これは、2004年に電通が提案した、AIDMAモデルに変更を加えたものです。インターネットが登場したことで変わった消費者のライフスタイルや行動パターンを取り入れています。認知、関心、情報収集、アクション、シェアという一連の段階を経ていくというモデルです。
- Attention: 注意
- Interest: 興味、関心
- Search: 検索
- Action: 行動
- Share: 共有
図7. AISASモデル
※AISASモデルとは、2004年に電通によって考案された購買プロセスを表すモデルのことです。このモデルは、インターネットの広がりと共に情報を積極的に収集するようになった消費者の動向を踏まえ、オンラインでのショッピング行動を分析するために考えられました。
AIDMA・AISASモデルの課題
現代の生活者の行動は急速に複雑になっており、AIDMAやAISASといった従来のモデルを使用して、消費者の購買プロセスを把握するのが困難になっていると言えます。伝統的なモデルは認知、興味、欲求、記憶、そして行動(購入)という順序で進むとされていますが、現在ではこのシンプルな順序で解説できない事例が多く見られるようになっています。
図8. モデル化できない生活者の行動
実際のところ、消費者が製品に気づき、興味を抱くという一連の流れとは反対に、検索エンジンやオンラインマーケット(Amazonや楽天など)で初めて知った商品を買うことがあるのです。検索をしてから興味を持つ場合や、発見後すぐに購買に至る場合など、従来の消費行動のパターンとは違う流れが増えています。
現代の消費者が示す行動の多様性や複雑さを鑑みると、認識から行動へと進む伝統的な直線的モデルは、今日の消費者の行動パターンを完全に理解するには不十分であるという問題が浮かび上がってきています。
こういった背景から登場したモデルが「パーセプションフローモデル」です。このモデルは、従来のモデルがカバーしきれない現代の消費者行動の複雑さを解決するためのものであり、単なる行動だけではなく、消費者の認知の変化を重視しています。
パーセプションフローモデルの登場
2018年にCoup Marketing Companyの音部大輔氏によって考案されたマーケティング・マネジメントのモデルです。
パーセプションというのは、認知とか知覚のことを指します。
従来のモデルが改善された点は、消費者の商品に関する行動のみならず、認識の変化も考慮に入れていることです。
参考図書「The Art of Marketing」
この理論に基づいて、実際のマーケティング戦略をどのように適用するかを検討します。顧客の行動や認識の変化を把握することは、有効なマーケティング戦略を策定するにあたって必要不可欠です。
5.2 パーセプションフローモデルを理解する
パーセプションフローモデルの理解
パーセプションフローモデルは、消費者の購買行動を認識(パーセプション)の変化に沿って描くフレームワークです。このモデルは消費者の行動を左右する認識の変化を捉え、消費者の行動変容に必要なコミュニケーションを導き出すことを目的としています。
パーセプションフローモデルについてはこちらのサイト(パーセプションフローモデルとは マーケティング的意味や事例・作り方)も参考になります。
このモデルでは、消費者の行動の変容を縦軸に、行動変容の過程を横軸に配置し、認識の変化を示しています。具体的な行動を言語化するために、行動の各段階(現状から口コミまでの8段階)が設定されています。
たとえば、「現状は競合を選び使用している」から始まり、「商品の認識に不満を抱き代替を意識する」など、消費者がどのように商品を認識し、最終的に購入に至るのかを示します。
パーセプションと行動の関連
パーセプションフローモデルでは、消費者の行動の裏にある認識の変化を重視します。このモデルは、消費者がどのように商品を認識し、その認識がどのように変化して行動に至るかを示しています。各行動段階で消費者の認識がどのように変わるかを分析し、その変化を促すためのキーメッセージ(刺激)を考えます。
具体的なワークショップでは、コア顧客の認識の変化を定義し、各フェーズでの課題を特定します。その後、課題を乗り越えるために必要なメッセージ(刺激)を考え、最適なコンタクトポイント(メディアや媒体)でどのように施策を実施すれば良いかを検討します。
次章では、このワークシートを用いた具体的な例を紹介し、実際に解説を行います。
5.3 ワークショップ4 - パーセプションフロー
では、ワークショップを開始しましょう。まだワークシートのダウンロードをしていない方は、ダウンロードしてすすめてくださいね。
進行するにあたり、[4パーセプションフロー例] というシートを参照していただければと思います。
ぜひご自分で実際に手を動かしてワークショップを行っていただきたいです。そうすることで理解がずっと深まるはずです。
ワークショップの進め方
- コア顧客を記載してください。
- 行動のフロー: 現状 → 認知 → 興味 → 検索 → 行動 → 共有とAISASモデルを軸に行動の状態変化を縦に並べました。ここに認識(パーセプション)の変化(各ステップで顧客の認識がどのように変化するか)を記載します。
認識の変化の例
- 現状: 歯磨き習慣をつけるのは困難
- 認知: 電動子供用の歯ブラシの存在を認知
- 興味: ゲーム感覚で子供が楽しんで歯磨きできそう
- 検索: ゲーム感覚で楽しめる歯ブラシを探索
- 行動: アプリ付き電動歯ブラシを選択し購入
- 共有: 他の親にも推薦
課題の記載について
生活者の認識が変わらない場合、どのような課題があるのか?を課題の箇所に記載していきます。例えば、以下のように、行動変容されない場合どこに課題があるのかを書き出します。
- 現状から認知への移行時の課題
- 課題は電動歯ブラシが選択肢に上らないこと。対策として歯医者や関連メディアを通じて、電動歯ブラシが習慣化と楽しみを提供するソリューションであることを伝える。
- 認知から興味への移行時の課題
- 課題はメリットが不明確。対策として受験関連メディア等でアプリとの連携を強調し、楽しみながら歯磨き習慣をつけることができるメリットを伝える。
- 興味から検索への移行時の課題
- 課題は子供が実際に喜ぶかが分からない点。対策としてデジタル広告を利用し、子供が歯磨きにかける時間が伸びる等のデータを提供する。
- 検索から行動への移行時の課題
- 課題は価格の高さ。対策として割引キャンペーンやクーポン発券の施策をマーケットプレイスで実施。
- 行動から共有への移行時の課題
- 課題は他人に推薦する理由の欠如。対策として紹介キャンペーンを行い、子供の歯磨きの時間が楽しみに変わったことを伝える。
キーメッセージとコンタクトポイント
キーメッセージ
キーメッセージとは、ブランドや製品に関する中核となるコミュニケーションの内容です。これは顧客に伝えたい最も重要な情報や価値、特徴を端的に表したメッセージです。効果的なキーメッセージは、顧客の関心やニーズに直接訴えかけ、製品やサービスに対する認識や行動を変える力を持ちます。
例えば、「子供用の電動歯ブラシは、習慣化と楽しさを提供する」というメッセージは、製品がどのような解決策を提供するかを端的に表しています。
コンタクトポイント
コンタクトポイントとは、ブランドや製品が顧客と接触する機会のことを指します。これには、広告、ソーシャルメディア、イベント、店頭販売、ウェブサイト、メールなどが含まれます。コンタクトポイントは、ブランドが顧客にキーメッセージを伝えるためのチャネルやプラットフォームとして機能します。
例えば、電動歯ブラシのキャンペーンにおいて、歯医者のクリニックや教育関連メディアなどは、顧客に製品情報を伝える効果的なコンタクトポイントとなる可能性があります。
キーメッセージとコンタクトポイントをうまく組み合わせることで、マーケティング活動はより効果的になり、顧客の認識や行動にポジティブな影響を与えることができます。
課題→キーメッセージ→コンタクトポイント
課題を解消するには、どのようなキーメッセージを伝えればよいのでしょうか?そしてどのようなメディアでそのキーメッセージを伝えれば最も効果的なのでしょうか?
それをワークシートへ書き出していきます。
それぞれの段階において、問題を明らかにし、その問題にふさわしい主要なメッセージを定義します。また適切なコンタクトポイントを活用してメッセージを配信することで、効率的に顧客の認識を変えることができます。その結果として商品の購入やサービスの活用へと導くプランが作成されるのです。
例題での事例
例題では以下のようにしていますので参考にされてください。
1. 現状から認知への移行
課題 | 電動歯ブラシが選択肢に挙がらない |
キーメッセージ | 子供用の電動歯ブラシは習慣化と楽しみを合わせたソリューションです |
コンタクトポイント | 歯医者さん、関連メディア、パンフレット配布、レベニューシェアのプログラム |
2. 認知から興味への移行
課題 | メリットが不明確 |
キーメッセージ | 「アプリとの連動を通じて、ゲームのような楽しさを感じつつ、歯磨きの習慣を身に付けることができるのです」 |
コンタクトポイント | コンタクトポイント: 受験関連メディア、記事提供、ボリュームのあるコンテンツ |
3. 興味から検索への移行
課題 | 実際に子供が喜ぶか不確か |
キーメッセージ | 「子供が歯磨きにかける時間が伸びている実証データあり」 |
コンタクトポイント | デジタル広告、ファクトデータの提供 |
4. 検索から行動への移行
課題 | 値段が高いと感じる |
キーメッセージ | 「期間限定の割引キャンペーン実施中」 |
コンタクトポイント | マーケットプレイスでのクーポン発券、LINEを通じたクーポン配布 |
5. 行動から共有への移行
課題 | 他人に推薦する理由が不足 |
キーメッセージ | 「子供の歯磨きの時間が楽しみに変わった経験談」 |
コンタクトポイント | 紹介キャンペーン、紹介者へのポイント付与 |
5.4 ワークショップ5 - 戦略策定
では、最後のワークショップに取り掛かりましょう。
シート名は [5戦略策定例] を見ながら進めていっていただければと思います。
これまでに実施してきたワークショップ4つを通じて、戦略の枠組みが確実に構築されてきたように思います。また、前章にて作成したパーセプションフローのリストをおかげで、どのような対策を講じるべきかがより明確になってきたと考えています。
この戦略を策定する段階で、具体的などのアクションを取るかという詳細について明確にしていくことになるでしょう。
定量化の重要性
戦略は定量化することが極めて大切です。マーケティング戦略を数値化し分析を進めます。目標を具体的に定めていくのです。
目標設定にはSMARTの原則が用いられるべきです。一緒に策定したマーケティングの戦略については、まだ数値的に明確にされていない部分があると思います。実際の行動に移すにあたって、目標を達成するための期限や具体的な計画を数値で設定することが求められます。
スマートの法則は、目標設定における重要な指針です。
- 具体性(具体的であること)
- 測定可能性(進捗が計測できること)
- 達成可能性(実現可能であること)
- 関連性(目標が適切であること)
- 期限設定(明確な期限があること)を意味します。
この原則に従って、目標を定める際には、具体的かつ計測可能であり、達成が可能で関連性が高く、期限が定められた5つの基準に適合するように設定します。
実例のところでは以下のようにゴールを設定しました。
20XX年3月までに、子供向けの電動歯ブラシを20万本の販売目標を立てている。
具体的戦略の策定
さらにそのゴールを達成するために必要な戦略を3つ定義し設計していきます。また、その戦略を達成するために重要な施策を挙げていきます。一つである必要はありません。
最後にKPIの設計となります。KPIというのは、終わりの目標に辿り着く途中のマイルストーン、あるいはステップゴールのようなものだと考えてください。私たちは、これらのKPIに到達することで、最終目標へと積み重ねていけるような計画を立てていくわけです。
戦略策定プロセス管理を整理しておきます。
- 定量化の重要性
- 「いつまでに何をするのか」を定量的に決めることの重要性。
- ゴール設定にはSMART法則を用いる。
- ゴールの設定
- 具体的、測定可能、達成可能、関連性、期限付きの5条件に沿ってゴールを設定。
- 戦略の定義
- ゴール達成に必要な3つの戦略を設計。
- 施策の選定
- 各戦略に沿った重要な施策を選定。
- KPIの設計
- 最終ゴール達成に向けた中間目標としてKPIを設計。
具体例に基づく実例解説
ワークシートのサンプルを見ていただければ明らかなように、今回のワークショップを経て、私たちの製品を市場に出すための新たな戦略を立案しました。
- マーケティング戦略
- 子供用高級電動歯ブラシカテゴリーで新しい価値を提供。
- ターゲット
- 歯磨き習慣がない子供の親。
- ゴール例
- 3月までに子供用電動歯ブラシ20万個販売。
- 具体的戦略:
- 子供用電動歯ブラシの認知向上。
- 製品メリットの伝達。
- マーケットプレイスを使った販売促進。
- KPI例:
- 歯医者さんへの認知率30%。
- デジタルメディアからの月間流入数5000クリック。
- マーケットプレイスで5万個の販売。
仮説を立てる重要性
マーケティングの戦略を立てる時は、はっきりとした目標設定と施策の決定が重要です。その過程で実現できる目的を決め、その目的へ到達するための具体的な戦略を策定します。当ワークショップでは、そのような仮説をどのように考えるかについて学んでいただきました。
全ての仮説が成功するとは限りませんが、失敗から学ぶこともまた重要です。失敗した仮説について分析を行い、どの部分が機能しなかったのかを把握することによって、次のアプローチや戦略を洗練させ、もっと効力のある新たな仮説を形成することが可能になります。
市場やお客様の要求は絶えず変わり続けるので、戦略もそれに合わせて柔軟な変更を加えなければなりません。仮設を設けることによって、マーケティング戦略を柔軟に調整し、市場のトレンドや顧客の振る舞いに素早く対応することができます。
この講座はこれで終わりになります。